
その昔、ノートパソコンには必ずと言って良いほど「PCMCIAスロット」が用意されていた。通称「PCカード」のスロットである。初期のノートパソコンにはPCとしての最低限の機能しか無く、何らかのハードウェアを追加して利用する場合が多かった。ハードディスクやモデム、無線LANなんかが相当する。USBが普及する2000年以前の時代だ。
このスロットは、通常Type I/IIなら2枚、Type IIIなら1枚刺せるようになっていた。Typeの違いは厚さだけである。Type IはType IIより薄いだけだったのであまり普及しなかった。フラッシュメモリー位でほとんど見かけなかった。一番多く利用されていたのはType IIだろう。Type IIIもハードディスク以外には、あまり見かけなかった。
Type IIのカードも実際には物理端子等が飛び出ていることが多く、実質1枚しか刺せなかった。またType IIIのハードディスクもカードサイズの問題から大容量のものは用意がされず、PCMCIAのハードディスクを追加する位なら本体のディスクを交換してしまった方が使い勝手が良い(保証外の改造になるけど)状態だった。
そのためかUSBが登場した後年からはType I/IIのみが1枚刺せる様に変わっていった。
デスクトップについては拡張スロットに増設するのが普通だったので、搭載しているPCもあったがあまり見かけることは無かった。またMS-DOSでも一応利用できたのだが利便性はそれほど良くなく、ほぼWindows95以上で利用されていた。
ユーザーは必要なPCMCIAカードをいくつか用意しておき、都度カードを入れ替えして利用していた。USBと同じでホットスワップ対応なので、無線LAN、モデムなんかを入れ替えて使用するのだ。プラグアンドプレイで自動認識されるため、一度ドライバーを導入すればすぐに使えた。

持ち運び用に専用のカードケースなんかも発売されていた。
今は無きPHSの「パルディオ 611S」なんかは普段は電話として使用しつつ、下半分がPCMCIAカードに対応(付属のアダプタ経由)していて、ノートパソコンに直接差し込むとモバイル通信ができた。前の341Sは32Kbpsの通信だったが64Kbpsまで増速されたためマニアに流行した一品である。
2000年前後くらいまでは急速にPCが進化していたので、時代に合わせてこのカードを使用して機能拡張ができた。例えばモデムなんかは14.4Kだったのが56Kまで進化したりしたので、まだまだ高額だった本体を交換するよりは都合が良かった。無線LANも同じだ。
ただ段々とノートパソコンの機能が強化されると、スロットにカードを差し込むことも少なくなっていった。

スペースが勿体ないのか中にはスロットに収納できる小型のカード型マウスや、単なる小物用収納トレイまで販売された。
その後、後継としてExpressCard規格に移っていったのだが、既にノートパソコンも標準でモデムや無線LANを搭載するようになり機能拡張が不要になっていた。どうしても必要な場合はUSB端子を使用した。ExpressCard 2.0と高速化された規格も登場したが、物理的な規格が変わってしまったので使われない拡張スロットは徐々に消えてしまう様な状況になった。
(余談ではあるがExpressCardと聞くと、今だと「JR東海エクスプレス・カード」の方が遙かに一般的であろう)
最近ではノートパソコンでは機能拡張用としてUSB端子があるだけである。メモリーですら追加が難しくなってきた。軽量化と薄型化の為だが、なんだか昔の方が何を機能拡張しようかとワクワク感があったのだが、少々残念な時代になってしまった。
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