PC-9801 サウンドボードで「ドレミファソラシド」

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NEC PC-9801 RX21では、PCから音楽を鳴らす機能についてはオプションだった。サウンドボードと呼ばれる拡張ボードが必要だった。
当時のN88-BASIC(86)でも最低限の音を出すことはでき、

BEEP

とだけ書いてリターンキーを押せば、ピッっという音だけは出せた。非常に原始的な音だ。
(ちょっと横にそれるがPC-9801は[ENTER]キーでは無く[RETURN]キーである。自分は未だに[RETURN]キーと言ってしまい、話が通じないことがある。。。)
もちろん技術を駆使すれば、このBEEP音でもなんとか自由に音が出せた。その気になれば音声も出力できた。実際に1990年代に大学の研究室にあった20万位するA/Dコンバーターで録音した音声データをPWM変調に変換して、PC-9801 RX21のスピーカーから直接出力するプログラムを書いたことがあるので間違いない。ただ全くもって実用的では無かった。

そんな環境でもオプションで豊かな音を出力するための拡張ボードが発売されており、NECからはPC-9801-26/Kというボードが発売されていた。いわゆるピコピコ音を鳴らすだけのものだがゲームをするには実質必須のボードだった。ゲーム用のジョイスティックポートが2つ用意されており、ATARI仕様のジョイスティックやパッドが接続できた。おそらく当時の個人ユーザーはほとんど搭載していただろう。
ただ問題は価格であり、たかがピコピコ音を出すためだけに定価で25,000円もの投資が必要だった。ほとんどのゲームはPC-9801-26/Kに対応していたため、安価なNEC以外の互換ボードも発売されていた。

このサウンドカードだがN88-BASIC(86)で、とても簡単に音を出すことができた。

PLAY "O4CDEFGABO5C"

とだけ書いてリターンを押せば、「ドレミファソラシド」を鳴らすことができた。実際に5分程度で意味を理解して音を出すことができた。
Music Macro Language(MML)と呼ばれる音楽演奏のための記述方法が理解できれば、かなり複雑な音楽を奏でることもできた。パソコンで音楽が奏でられるのが楽しくて一日中遊んでいた記憶がある。

このサウンドカードだが、YAMAHAのYM2203と呼ばれるFM音源チップが搭載されていた。PC向けに製造されており、他メーカーの機種でもこのチップを乗せているものが多かった。ゲームセンターにあるゲーム機にも搭載されていたことがある。当時のコンピュータの音と言えば、このチップの音を指していると言っても過言ではないだろう。今でも探せばこのチップを購入できるようだ。

PC-9801 RX21に初めて機能拡張のために購入したのが、このサウンドボードだった。もちろんお金が無いために互換品を買った。SNE社の「SOUND ORCHESTRA」というボードだ。
このボードにはYM2203の他、YM3812というチップも乗っていた。YM2203の部分はPC-9801-26/Kと互換性が高く、ゲームなどで音が鳴らないものは無かった。しかも純正品より安価に購入できた。YM3812については当時は「斬~陽炎の時代~」という歴史系シミュレーションゲームが公式に対応しており、もちろんそのゲームも購入して楽しんでいた。

マニュアルには標準のYM2203用の音の鳴らせ方に加えて、YM3812用のサンプルプログラムも用意されていた。なんでもBIOSプログラムが用意されているので、簡単に音楽が鳴らせるとの触れ込みだった。しかし書いてあるプログラムが全くと言って良いほど理解ができなかった。
実はYM3812についてはアセンブラの知識が必須だったのだ。それが理解できるにも月日が必要だった。たしかにBIOSが用意されていたので、必要なデータを打ち込んでBIOSを順次CALLすれば良かったのだが、はっきり言って簡単というのはどうか?というレベルだった。今でもそう思う。

その後、意味を理解してYM3812の「ドレミファソラシド」を鳴らすには5年の歳月が必要だった。まぁ音を鳴らしてみたいが為にアセンブラの基礎を学び今に繋がっているので、無駄ではなかっただろうが。。。
ただ一度「ドレミファソラシド」を鳴らした後は満足して、それ以来プログラムを組むようなことはなかった。もしも入力に失敗して実行すると即暴走してしまい、どうしようも無くて心が折れた。しかもこのBIOSは後にEMSメモリと競合するアドレスにあり邪魔だったので切り離したのだった。
そしてYM3812に対応したゲームは、その後発売されていなかったのではないだろうか?「斬~陽炎の時代~」意外に私は知らない。

ちなみにPC-9801 RX21へ設置する場合には、本体側のボリュームで音量を制御することができた。しかしながら本体側の指定ジャンパーピンを外して、本体とサウンドボードをケーブルで繋ぐという作業が必要だった。今では考えられない作業手順だった。

怪しげなサウンドボードを買ってしまったが、今でもとても記憶に残る製品だったのは間違いない。

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