CPUアクセラレーター

この記事は約4分で読めます。

1992年以降はCPUの性能が爆発的に上がっていった時代だった。
すぐにPCが陳腐化してしまうため、もう今は聞かないが「CPUアクセラレーター」という怪しい商品が一時期流行した。

16ビットの80286に対して32ビットの80386DXがあったが、80286のマザーボードの設計をほとんど変えずに32ビットCPUが乗せることができる80386SXという型番があった。廉価版の32ビットCPUである。PC-9801シリーズだとRXに対してRSという型番のものだ。
この特徴を生かして、PC-9801 VXやRX用に80286を80386SXに換装するCPUアクセラレーターが存在した。性能の割にはとても高価だったので実際に使用したことがある人は少ないだろう。

そして、Cyrixという会社が80386SXとピン互換のままCx486SLCという製品を販売開始した。80386SXが80486命令対応になりCPUキャッシュを搭載して高速化したものだ。
ここで80286を80386SXに載せ替えできて、80386SXからCx486SLCに載せ替えができるのなら、80286から直接Cx486SLCに載せ替えできるんじゃない?と生まれた商品があった。
今思うとかなりキワモノ商品だ。それがCPUアクセラレーターである。
当時所有していたPC-9801 RXは12Mhz駆動だったが、これを24Mhzにクロックアップし、しかも486命令が実行できるという夢の様な商品が発売された。ハードディスクを購入したばっかりなのに、魅力的すぎる商品だった。

当時またまた必至にアルバイトでお金を貯めて、やっと購入したのはアイ・オー・データ機器のPK-X486SLというCPUアクセラレータだった。搭載されていた80286を引っこ抜いて、このキワモノ製品に載せ替えるのだ。価格も手ごろで3~4万位だったと思う。
当時RXのカタログには「80286相当」と記載されていたのが気になっていたのだが、交換時に気がついた。実はAMD社のAM286が搭載されていた。
初期設定を終わらせてアプリケーションを実行させると差は歴然だった。圧倒的に高速化されて驚いたものだ。
たった1KBのキャッシュサイズだったが、このキャッシュがもの凄い働きで、体感は本当に倍速だった。ただキャッシュをOFFにすると、通常の80286 12Mhzよりも20~30%位体感で遅くなるのが分かった。
16ビットパソコンが32ビットパソコンになり、利用範囲が広がったのが大きかった。特に仮想86モードのEMSやUMBと呼ばれる仕組みが重要で、メモリーにもあまり不自由しなくなった。
ただ動きとしては少々怪しかった。いくらかハングアップしやすいし、ちょっと動きがぎこちないところがあった。うまく表現できないが高速で動作するものの、ちょっとしたタイミングでカクつくのだ。おそらくキャッシュが著しくヒットしないタイミングの時だろう。

一般的なアプリケーションでの利用は問題ないものの、やはり一部ゲームでは支障があったりした。CPUキャッシュをOFFにすれば大抵解決したが、それでもダメな場合はPC-9801 RXは本物のV30も搭載されていたため、CPUをV30に切り替えてしまえば良かった。
動作速度はかなり落ちるものの、互換性は完全だったので動作しないソフトは無かった。この点は大変便利だった。

この頃は、PCの進化速度が速すぎで3年位すると実用に耐えなくなってきたが、「CPUアクセラレーター」に換装すれば、2年位は延命ができた。
このCPU換装はとても流行った。80286と80386DXはソケットタイプなので多種多様な商品が発売された。しかしながら80386SXはハンダで実装されていたため交換は難しく、後に上からかぶせるタイプも発売されたが、あまり流行らなかった。
後に80286用は「IBM 486SLC2」というチップを載せたもので48Mhzまで高速化されたものが発売された。キャッシュも16KBと増量されており実際にかなり高速だったようだが、残念ながら資金不足で購入ができかった。今でもちょっと心残りの製品があった。
後にINTELもオーバードライブプロセッサなる商品を販売してCPU換装ができるようにしていたが、いつの間にか無くなってしまったのが残念である。

2011年4月にCore i7-2600KのPCを構築し、約8年半後の2020年10月にやっとRyzen 7 PRO 4750GのPCに変更したのだが「おっ!ちょっと早くなった!!」てな感じだった。
CPUアクセラレーターを導入したときの「うぉぉぉ!!!」というような驚きは、もう今後無いのかもしれない。ちょっと寂しいものである。

コメント