
八郷蒸留所を後にして、次は常陸野ネストの額田醸造所へ向かう。
「日の丸ウイスキーKOME」のハイボールが無くなった頃、丁度友部SAに到着した。
下車時に言われたことは「くれぐれも納豆は食べないでください!」とのこと。
もちろん乗車時も「納豆は食べていないですよね?」の確認。とても気を遣っていることが分かる。
本当は「納豆ドッグ」とか食べたかったんだけど、トイレ以外は何もせずに戻った。まだBAR BUSのドリンクを全種類制覇していない。
早速「日の丸ジン蔵風土」をリクエストしてみた。たぶん言えば作ってくれるけどジンソーダ一択だけだ。
ジンだとタンカレーは冷凍庫に常備してしていて、ビーフィーターかボンベイサファイアのどちらかはストックしているし、ジントニック用にウィルキンソン、シュウェップス、カナダドライあたりも常備している。
流行だけで店を開いたような下手くそなバーマンよりは、うまいジントニックを作れる自信はあるし、実際にそう言われる。
最近はなぜかジンが一押しである。
実はジンはウイスキーなどに比べて作りやすい。乱暴に言えば蒸留酒を造る機械さえあればあとはジュニパーベリーさえ用意すれば作れるし、作る期間も数ヶ月と短い。元になる穀物も別に何でも良く、ウイスキーと同じでも違っても良い。
そしてボタニカルと呼ばれる香草類を用意すれば個性も出しやすい。数種から数十種類といろいろだ。
ウイスキーブームで商品が逼迫している中、手っ取り早く収入を得るのに良いのだろう。
「日の丸ジン蔵風土」だが国産のレモンやライムに加え、赤紫蘇、茨城県で古くから栽培される古内茶等を使用しているとのことだ。
海外ではおそらく見かけない、とても日本な感じのボタニカルである。
早速試飲すると結構美味しい。柑橘系の香りと甘みを強く感じる。ジンではあるものの他では味わえない風味だ。結構面白い。お茶や紫蘇はちょっと分からないが、少なくとも大手メーカーのジンとは全く違う。
ジンソーダでは無く、ジントニックで飲んでみたかった。シュウェップスあたりが良さそうな気がする。

そんな中、やっと到着した。「額田醸造所」である。
常陸野ネストビールの製造拠点と言った方がわかりやすいだろう。
入口は八郷蒸留所に比べて非常に地味だ。一応案内板はあるのだが、あっというまに過ぎてしまい到着だ。写真を撮る余裕も無い。

早速食品用白衣をまとって工場見学。
ウイスキーもビールも実は作り方はあまり変わらない。麦汁を蒸留すればウイスキーになるし、ホップを加えて発酵すればビールだ。
なので極端に言えばポットスチルの有無くらいで、違いはあまりない。

クラフトビールの工場としてはかなり大がかりだ。用意されている機械の数や種類が違う。さすがに一線を画しており、ちょっとしたブルワリーでは全く対抗できないくらいの規模である。ただ大手ビールメーカーの工場からすると赤子同然の規模だ。
この辺がクラフトビールとしては面白い。
マイクロブルワリーは量が作れない代わりに尖っている商品を出せるのだが、どうしても金額が高めになってしまう。大手メーカーは自動化されているので安く提供できるが冒険ができない。常陸野ネストビールはその中間あたりくらいだ。
もしも工場見学する場合は、どこかの大手ビール工場に行ってからの方が良いだろう。より楽しめるはずだ。

ホップや麦の説明を伺う。ペレットになったホップだが、モザイク、チヌーク、ザーツの3種類が用意されていた。それぞれアロマが全然違う。多分知らないで嗅ぐと単に臭いだけだ。おみやげに持って帰っても良いとの事だったが、さすがにどれがどれか分からなくなるので諦めた。これと麦芽の種類やローストの具合、ホップの種類など複数を選択して一つのビールになる。正直自宅で誰でもビールは造れるのだが、美味しいビールとなると話は別だ。何度もトライしないと美味しいビールはできない。職人芸である。

今回は3種類を頂いた。ビールはちゃんとタップから入れてくれる。
当たり前というか残念ながら自由な散策時間は無い。
仕方ないので「おかわりもどうぞ」との事だったので、飲めるだけ飲んでみた。正直味は直営店で頂くのと変わらないが、現地で飲むのは格別だ。ひそかに封を開けていない「CRATZ」を用意していたのだが、絶対怒られると思って止めた。
すぐにバスに乗ると最後の「木内梅酒」のソーダ割りを頂く。これで最低限のノルマは達成だ。スタッフには「15分程度で次の目的地へ到着しますよ?」と言われたのだが、15分も耐えられるわけ無かろう。遠慮無くオーダーする。
この梅酒は常陸野ネストビールを蒸留してビールスピリッツにしたものを使用したものだ。通常梅酒は無色透明で香りやクセも無いホワイトリカーを使う。安いし。
ちなみに自分で梅酒を作るのであればブランデーやウオッカで作ってもいい。グレイグースとかでも作ったことがあるが、まぁ自己満足の世界だな。その他「みりん」をはじめ「ワイン」や「日本酒」でも面白いのだがアルコール度数が低いので少々管理が面倒なのと酒税法的にかなり問題だ。たいてい密造酒になる。なんで味を知っているかは謎である。
「木内梅酒」だが、ちょっと甘めの梅酒で他には無い風味を感じる。たぶんこれがビールスピリッツの風味なのだろう。とても美味しいし特色がある。正直に言うと日の丸ウイスキーよりこちらの方が好きである。元からアルコール度数も低いので一気に飲み干してしまう。10分もかかっていない。

残念に思っていると、すぐに目的地へ到着した。「木内酒造 鴻巣本店」である。いかにもな感じの門構えだ。
中に入ると確認があった。「納豆は食べてないですよね?」とのこと。とても気にされていることが良くわかった。過去にマナーの悪い客がやらかしたのかも知れない。

早速中に入ると木桶がお迎えしてくれる。現在はこの1個だけとのこと。
もう職人がいないし管理も面倒なのだろう。自分が死ぬ頃には木桶は無いかも。
酒蔵が木桶を使わなくなったのは戦後で、食糧不足から日本酒なんか造っている余裕は無いしロスも多い。不潔なイメージもついてしまい廃れてしまった。
壊れてしまったら直せる職人も現在はそうそういない。
「菊盛純米樽酒」のように木桶を使ったらブランドになるほどだ。実のところそういう説明は無かったのだが、現存する木桶の一つとして見学すると良いだろう。

次に見たのは蒸米の行程だ。一番上に大吟醸、吟醸、普通米、と順に層にして蒸すそうだ。どのように分けるのか尋ねたら、ちゃんと別々の布でつるしているらしい。蒸米の行程を見られる酒蔵もあるが、大抵ガラスの向こうだ。この距離で見られるのは大変珍しい。
面白いのは一番下でダミー米がつるしてあるそうだ。一番下は結局使えないのでダミーを使ってコストダウンしているそうだ。
酒蔵見学はここまで。圧搾機だとかを見てみたかったのだが、見学用に酒蔵ができていなため限界なのであろう。折角なので人がはけた後に色々と質問してみた。大吟醸は40%まで精米していると言っていたのだが通常は50%である。尋ねてみたら差別化のためにそうしているそうだ。これはちょっと珍しい。また基本的に純米酒のみでアルコール添加はしていないとのことだった。商品を確認してみると50%でも吟醸酒を名乗っているものが多々あった。普通なら大吟醸だ。こだわりがあるのだろう。

見学が終わると併設されている「蔵+蕎麦な嘉屋」で夕食の時間となった。
いかにも高級そうなお店で、席も贅沢な感じだ。さすがに高いお金を払っただけのことはある。
一つ残念だったのは「ペアリング」を楽しむための時間であって、全く飲み放題では無い。当たり前だが提供された日本酒だけだ。
お上品に日本酒を頂くこととした。
ちなみに料理は最近流行の「マリアージュ」という言葉を使わずに常に「ペアリング」を使用していた。お酒と料理の組み合わせを「ペアリング」というのだが、それによって出来た新しい楽しみ方や感動について「マリアージュ」を使う事が多い。
「マリアージュ」かどうかは、こちらが決めてくださいという一歩引いた感じが日本的で良かった。ちなみにホームページは「マリアージュ」を使用している。

見た目も華やかな前菜から始まる。







お料理とお酒はこんな感じ。最後の生ハムの茶漬けは大変美味しかった。他も普段では食べられないような料理とお酒で大満足。ただ普段は安居酒屋が多いので場違いな感じがして落ち着かない。さすがブルジョアを対象にしているツアーである。
食事を頂いた後は自由時間で売店などをめぐる。さすがに本店だけあって充実している。もちろん日の丸ウイスキーも置いてあったのだが、自分が買ったプラムリキュールカスクフィニッシュだけは置いていなかった。こちらは八郷蒸留所で購入するしかなさそうである。
あっというまに時間となりバスに乗り込んだ。専用タンブラーには、先ほど頂いた梅酒ソーダの氷が普通に残っていて驚く。保冷力がすばらしい。
最後の一杯を所望すると、こう言われた。
「BARはもう閉じてしまいました!」
ええっ!
他のお客さんもドン引きである。いやいやこれからじゃ無いか!
と寂しそうな顔をしていると、「このボトルのストレートで良ければ!」とのことで遠慮無く頂く。それもちょっと多め。
残っていた水とCRATZで「Signature 1823」を頂いた。ストレートになると味わいが違う。目をつぶって最後の一口を楽しむ。
目をつぶっていると、今日の思い出が色々と駆け巡る。高かったけど参加して良かったのは間違いなかった。とか思っていたら、どうやら眠ってしまったらしい。気分的には10分後に最終目的地のつくば駅に到着する。あっという間である。
こうして家路についたのだった。
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