受付は12:30からだったが、かなり時間が余ってしまったので早めに入場することにした。
2Fにテイスティングホールがある建物の1Fで、「RITA’s KITCHEN」が会場である。
さすがにこちらは少々早くても入場を受け付けてくれた。
自分の名前を告げると名札をくれる。たしか10年前は名札に名前が書いてあったような気がするが、このご時世なのでE:420923とだけ書かれた名札だった。
名札と同じEテーブルの樽番号:420923が自分のテーブルだ。
「RITA’s KITCHEN」に入ると、沢山の方が笑顔で迎えてくれた。思わず笑みがこぼれる最高の瞬間だ。早すぎかと思ったら、思いのほか人が入っていた。やっぱり待てない方が多かったのだろう。
コート類を脱いで、自分のテーブルに着く。
「RITA’s KITCHEN」は完全にこの日のために準備されており、立食パーティー形式になっていた。椅子の類いは壁際に少々用意されているだけで、不要な物は撤去されていた。
テーブルの上におつまみが用意され、ラップがかけられていた。
ふと中央を見ると、あるではないか!我がマイウイスキーが!!!
手に持っていると注意が飛ぶ「このウイスキーは写真撮影用で試飲用ではありません!」と。いきなり開ける人もいないだろうけど、やっぱり試飲用だと思っていた。では、おかわりは?おかわりはできるの?と、ふと見渡すとバーでも見たことが無い光景に出会った。
すべて2014年に樽詰めされた余市シングルカスク10年である。
シングルカスクとは、他の樽のモルトウイスキーを一切混ぜずに単一の樽から瓶詰めされたもので、通常でも大変貴重だ。
アルコール度数から、おそらく一切加水(カスクストレングス)されておらず、そのままの状態だろう。
全がヴィンテージウイスキーで相当な希少酒である。
これが飲み放題なのである。
ちなみに液面が瓶ごとに違うが、参加者の多さに反比例している。
瓶の口についているのは、おそらく定量ポーラーで、この手の希少酒に取り付けてあるのは見たことが無い。
入場してすぐにウェルカムドリンクが配られたが、絶対に酔ってはならない。でも飲みたい!という30分を悶々と過ごす。時間までかなりあったが、相当な方達(8割以上)が同じように立ったまま待っていた。
12:30きっかりに懇親試飲会は始まった。
工場長はもちろん、ニッカと親会社のアサヒビールから蒼々たるメンバーが参加されていた。作業着かと思ったら全員スーツ着用である。なんといってもメインゲストは「竹鶴孝太郎氏」である。創業者の竹鶴政孝氏のお孫さんだ。まさかこの会場に来ているとは思わなかった。某夢の国で人気者のネズミに合うよりもレアな体験である。
ちょっぴり長めの挨拶の終わりに、工場長が突然ラップ調で「いえーい!」と親指と小指を立ててアピールし出す。何事か?と思ったがここは小さめの指笛で対抗してみた。
どうやらラップが始まると、料理のラップを外す合図だったらしい。
1時間の試飲のための料理としては十分な量だ。主役はウイスキーである。
そしていよいよ配られた「マイウイスキー」の試飲時間だ。
10年の歳を重ねた琥珀色だ。鼻を近づけて香りを楽しんでみると、樽の香りと甘い香りが広がる。そして乾杯の音頭とともに頂いた。
当たり前だが、とても美味しい。10年待った甲斐があった。最初からシングルカスク用に新樽のホワイトオークの樽で作られていたため失敗は少ないのだが、非常に良く味がまとまっている。カスク独特の荒々しさも感じられ、自分の知っている余市10年とは全く別だった。
さて自分の樽は家でも飲める。当然他の樽も気になるのだ。もちろん7種類全て頂いた。飲む度にチェイサーで口の中をリセットすることは忘れない。ウイスキーのメーカーや商品が違えば味が違うことは分かるのだが、ほぼ同時期に同じ貯蔵庫で作られたのにもかかわらず、全てが全然味が違う。今までカスクを何度も頂いたが、味くらべはしたことが無い。ここまで違うのかと驚いた。目隠ししても自分の樽が分かるだろう。
もちろん自分の作った樽番号:420923が一番!といいたいところだが、樽番号:420924は個人的に別格だった。味のまとまりといい香りといいとても気に入った。特にピートが力強い。昔は購入できる数が多かったので交換なんかしたらしいが、是非交換をしてみたい感じだった。もしもオークションとかで売りに出す輩がいたら買ってしまいそうである。
たぶん10杯くらいは飲んだろうか。最後の締めはニッカウヰスキーおすすめのソフトクリームがけである。自宅でもたまにするが、大人の味でとても美味しい。ただシングルカスクでやる人はそうはいないだろう。大変贅沢な経験だった。
時間さえあれば、あともう一周はできたのだが中締めの時間となってしまった。最後にと思ったら、既にかたづけられていた。残念。
なんとか「竹鶴孝太郎氏」との記念撮影をお願いして会場を後にした。その後、長蛇の列になっていたけど。
たった1時間の為にお金と時間をかけて余市まで行って良かったかと聞かれれば、とても幸せな時間だった。10年間も楽しませてくれたし、お金では解決できない貴重な経験だった。ニッカウヰスキーに感謝したい。
上級コースは30倍の倍率らしいが、もはや通常コースの方が倍率が高いらしい。なんとか健康なうちに上級コースも経験してみたいものだ。
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