古のハードディスク

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ディスク装置と言えば、時代はもうエントリー機でもSSDが標準だ。おそらく2030年代にはハードディスクを知らない世代がでてくるだろうだろう。速度よりも容量を求める用途にわずかに残るのかな?と思っている今日この頃だ。

1990年代初頭までは、ハードディスクの搭載は高嶺の花だった。
自分の買ったPC-9801RX21はハードディスク無しで定価338,000円、上位機種のPC-9801RX51は40MBのハードディスク付きで定価で508,000円だった。40GBでは無く40MBだ。ハードディスク搭載以外には何もスペックは変わらなかったので、差額の170,000円がハードディスク代である。

ハードディスクはこの頃から構造はほとんど変わらない。ディスクが高速回転する事で発生する風圧で、データの読み書きをする磁気ヘッドはわずかに浮いており接触はしない。浮いてると言っても0.00001mm位なので、衝撃を与えてしまうと接触してしまうのは分かると思う。
そんなハードディスクだが、安全のためオートリトラクトいう機能がついている。
リトラクトとは、ハードディスクの磁気ヘッドを安全な場所へ動かすことを言う。
電源を切るときや、しばらくアクセスが無い場合は自動的に安全な場所へ退避して、ある程度の衝撃には耐えられるようになっているのだ。
最新型では加速度センサーが付いており、落下や衝撃を検知すると自動的にリトラクト処理を行い、データを保護するようになっている。

ただ、ハードディスク登場初期は非常に衝撃に脆弱だった。
モニターがブラウン管だったため専用のパソコンラックに設置することが多かったが、このパソコンラックへ不注意にぶつかり、ハードディスクのヘッドが接触してしまうことがあった。もちろんこの後は何をしてもデータは読み込めない。
まだこれは不注意だから納得もいくだろう。突然の地震でパソコンラックが揺れてしまい、結果クラッシュしてしまうこともあった。

ここまでも、まぁ納得が行くかもしれない。
1990年位までのハードディスクは、そもそもオートリトラクトの機能は無かった。
リトラクトの処理は手動で行わなければならない。もちろん電源を切るときもだ。
PC-9801シリーズの場合は、必ず[STOP]キーを押してから電源を切らないとならない鉄の掟があった。この掟を破ると当然磁気ヘッドは接触してしまい、ハードディスクは死に二度とデータを読み込めなくなるのだ。もしもPC使用中に地震を感知した場合、自分の身を守る前に、すかさず[STOP]キーを押さなければならない。その位シビアだった。
その後、当然ながらオートリトラクト付のハードディスクが登場した。もちろん大々的に「オートリトラクト機能搭載」の文字が躍っていた。

オートリトラクトが搭載されたハードディスクを所有しているユーザーは、ディスクアクセスが無ければ電源を切っても問題は無かった。しかしながら鉄の掟を知る当時のPC-9801ユーザーは頑なに[STOP]キーを押し続けた。ちなみに1回押せば「カコッ」という音とともにリトラクトされるのだが、安心のため数回は連打したものだ。

この連打の癖は、自分はなかなか消すことができなかった。
Windows95の時代は、まだ自動で電源をOFFする機能はなかった。
通常「コンピュータの電源を切る準備ができました」のメッセージが出てから、押込式の電源ボタンを押して電源を切っていた。
当時もPC-9801シリーズを使用していた私は、このメッセージを確認したらやっぱり[STOP]キーを連打してから電源を切っていた。

この癖がやっと消えたのは、物理的に[STOP]キーが無い所謂DOS/Vマシンになってからである。

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