ワープロ専用機

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Windows95の登場までは活字印刷をするといえばワープロ専用機が主戦場だった。
それ以前となると日本タイプライター社の和文タイプライターであるパンライターシリーズあたりになるだろうか?グリコ・森永事件で使われた奴だ。実際に使用したことのある最後の世代かも知れない。

1990年位まではワープロはビジネス向け、パソコンはホビー向けという考えの方が多かった。まだまだPCは非力で専用機の方が使い勝手が良くコストパフォーマンスも良かった。PCの場合はワープロソフトの用意とプリンターの用意が必要なのだが、ワープロ専用機は全て揃っているため半額以下で用意ができた。ただPCの場合はレーザープリンターを用意できれば、ギザギザな文字では無く印字品質が良かった。

この頃の文字装飾は今思うと非常に簡素だった。フォントは明朝のみかプラスしてゴシック位で罫線は使えるものの図形を扱うことは難しく、文字サイズも標準、横倍角、縦倍角、4倍角しかなかった。Windows標準のWordPad以下の機能だ。
特に初期の家庭用普及機だと1行しか液晶画面が無く、実際に印刷して印刷状況を確認してみるような操作性だった。マウスはもちろん無い。
キーボードについては今よりも種類があった。かな入力についてはJISタイプのもの、50音配列のもの、富士通オリジナルの親指シフト入力のもの等があった。
50音配列のものはワープロ初心者には好評で、左上から50音に並んでいたためキーボード配列を覚える必要があまりなかった。逆にブラインドタッチはあまり考慮されていなかった。親指シフトは打鍵数が少なく例えば濁点や半濁点も一度で入力ができたたため、慣れてしまえば非常に高速で入力ができた。現在でも細々と残っているが2026年6月に全てのサポートが切れてしまうようだ。

ワープロ専用機の問題はメーカー間で文章の互換性が全く無かったことだった。標準だとMS-DOSのテキスト形式で出力と一太郎フォーマット位は出力できただろうか。そのため一度購入したメーカーを使い続けるユーザーが多かった。後年Windows移行用にコンバーターが販売されたが、特殊文字や罫線などオリジナルの部分は再現が難しく今ひとつの性能だった。結局Windowsになっても、一部の企業はそのメーカーが用意したワープロソフトを使う事も多かった。さすがに現在はほぼWord形式に統一されている。

Windows95になって驚いたのが標準のWordPadだった。簡易的だとは言え数年前のワープロ専用機を凌駕していた。当時「WYSIWYG」と呼ばれる見たままの画面が印刷される編集方法はWindowsが登場するまでは難しく、その様な操作が必要な場合はDTP専用機か、Macを使う事が一般的だった。文字フォントやサイズを自由に指定できることが斬新だった。当時はこれで十分な機能だった。
反対に倍角文字はすっかりと消えてしまった。今でもWordで工夫すれば縦倍角、横倍角を再現できるのだが、わざわざ使用している人を見たことが無い。

ワープロ専用機も後年はパソコン通信やインターネットにも対応したが、内蔵ソフトウェアの更新が難しかった。特にインターネットはInternet ExplorerとNetscape Navigatorのみ対応のサイトが多く、ワープロ専用機で閲覧されることを考慮していなかった。結局おまけ程度の機能だったため全く普及することは無かった。

インターネットの普及とともに、あっというまに駆逐されたのがワープロ専用機だった。
そんな商品があったことを知らない世代が増えてきているのだろう。そのうちPCもキーボードが無くなりフリック入力専用の装置になるのかもしれない。

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