シリアルポートとパラレルポート

この記事は約5分で読めます。

昔のPCには必ずと言って良いほど搭載されていたのが、シリアルポートとパラレルポートである。
それぞれ何か外付けの機器を繋ぐためにある。今はUSBに代替され搭載されているPCの方が珍しい。一部の自作用マザーボードなんかには、今でもピンヘッダだけは用意されておりコネクタ付ケーブルを買ってくれば増設することも可能にはなっている。ただ今時わざわざ追加する人はよほどのマニアだけだろう。

シリアルポートは現代においては9ピンをよく見かけるが、実は25ピンが標準である。非同期専用として9ピンが制定され普及したのだが、産業用途でも無い限り25ピンを必要とすることはほとんど無かった。ちなみに25ピン端子のケーブルでも「全結線」と書いていなければ必要な9ピンだけが結線されているものもあった。「全結線」は高額だったので格安のパチモンケーブルも販売されていたが、全く問題にならなかった。
NECのPC-9801シリーズはずっと25ピンが標準だった。後年追加されたPC-9821シリーズのチャネル2の端子は9ピンだったが、チャネル1はずっと25ピンのままだった。

シリアルポートについては人によって言い方が違った。RS-232C(通称:アールエス)と言ったり、COMポートと言われたり、CCU、UART(ユーアート)とかも言われた。
結局どれも同じ端子を意味する。ソフトウェアの設定ではボーレート、パリティ、ビット長とか諸々の設定を間違えると全く通信ができずに繋がらない。今風に言うとIPアドレスを手動設定するよりは面倒だった。もう初心者には何を言っているのか分からないような謎の呪文だらけの端子だった。

この端子に繋げるのは一般的にパソコン通信用のモデムだ。多くの場合、PC-9801シリーズ用に25ピン接続用のケーブルが付属していたが、後年は9ピンにも接続できるよう変換アダプターが付属してた。もちろん付属ケーブルは大抵9ピン分のみの結線だ。
このポートはPC-9801シリーズでは通常9,600bpsまでの通信速度に対応していた。モデムの場合、9,600bpsの前は2,400bpsが一般的だったのだが、この通信速度から高速モデムと言われていた。当時パソコン通信で有名だったNIFTY SERVE(現アット・ニフティ)は、従量課金だったのだが1分あたりの接続金額が違った。2,400bps以下の接続だと毎分8円、9,600bps以上だと毎分20円も取られ扱いが違った。今だとスマートフォンが通信制限を受けた場合は128Kbps位が一般的なので桁が違う。止まっているのと変わらない速度だろう。

1990年を越える頃になると、14,400bpsのモデムが発売されるようになった。PC本体は9,600bpsまでの対応だったので、PC側が能力不足になった。
全く保証は無いのだが多くのPC-9801シリーズでは一般的に38,400bpsまでは速度が出せた。出せない機種でも規格外の20,800bpsや41,600bpsという速度を出すことはできた。
そのためこのイレギュラーな通信速度に対応したモデムが多く販売された。もちろん本体側がサポートされていないため、分かっている人達だけが使えたモードだった。ただ9,600bpsを超える通信速度が使えたとしてもPCが古すぎると平気で文字化けした。今と違って文字コードが違うという理由では無く本当にデータが欠損してしまうのである。
後年は一般的に115,200bpsまでサポートされた。今でも一般的な上限値だ。もちろん今ではこれより早い速度を出せるオプションボードやUSBのシリアル変換ケーブルも販売されているが特殊用途でしか利用されない。

その他の用途としてはプロッターなんかの接続に使われていた。今でも一部のプロッターは未だにシリアルポートを要求される。USB接続経由の端子でも使えるはずなのだが、相性問題が発生することがあるので、古の端子を要求されるのだ。この辺の初期設定はプラグランドプレイでは無く複雑怪奇なものなので老兵の出番である。
その他としてはサーバーの無停電電源装置との接続に使われている。今ではほぼUSB経由になったが昔は枯れた技術としてシリアルケーブルで接続することが好まれた。データ保護に関することなので、新しい技術よりも確実性を求めるためだ。サーバー側は停電の信号を受け取ったり通信が途絶えると自動的にシャットダウンされた。ちなみにシリアルケーブルを突然抜くと異常検知でシャットダウンされるのが一般的な設定である。
特殊用途としてはルーターやファイアウォールのネットワーク機器の初期設定は、今でもシリアル端子経由が一般的だ。ネットワークを介さずに直接機器とやりとりするにはこの方法しか無いからだろう。ネットワーク技術者にとっては、今でも必要なスキルなのかも知れない。

パラレルポートも似たような感じだ。こちらも人によって言い方が異なりプリンターポート、セントロニクス端子(通称セントロ)、LPT等と呼ばれている。
今ではUSBと言えば誰でも分かるし、それ以外は言われないので悩むことは無い(細かいところで規格が増えすぎて何が何だか分からない感じになっているけど)
パラレルポートは、ほとんどの方にとってはプリンターの接続のみに使っていた。その他の用途としてはスキャナー位だろうか?
マニアックなところではZIPドライブと呼ばれるリムーバブルメディアがあったのだが、こちらはパラレルポートに接続した。

パラレルポートついては、設定は特に難しくなかった。ケーブル接続さえすればほぼ使えた。プリンターと言っても事実上設定は3種類程度しか無く悩む必要がなかった。

  • NECのプリンターなら「PC-PR201」を選択
  • EPSONのプリンターなら「ESC/P」を選択
  • Canonのレーザープリンターなら「LIPS」を選択

その他のメーカーでも大抵どれかのエミューレションモードを搭載していたし、分からなければ「PC-PR201」を選べば大抵動かすことができた。EPSONのプリンターも大抵は「PC-PR201」のエミュレーションモードを持っていたし、Canonのレーザープリンターは「ESC/P」のエミュレーションモードを持っていた。

USBが普及すると、プリンターはUSBもしくはLAN経由で接続することが一般的となった。接続端子も大きく用途が急速に無くなってしまったため、シリアルポートより早く急速にパラレルポートは搭載されなくなってしまった。ある時期から突然無くなってしまった印象だ。

USBが無い時代は、これらの端子が無いと印刷も通信もできないわけでノートパソコンにも標準で端子が搭載されていた。そのためモバイルパソコンと言っても、かなり分厚かったし大きかった。今ではLAN端子ですら本体に搭載されず薄型化されている。電源も薄く小さなUSB Type-Cへ接続するように変わった。
昔のPCと一番大きく変わったのが、シリアルポートとパラレルポートが無くなりUSBに統一されたことかも知れない。

コメント