1997年10月頃だったろうか、初めてリコー製のDC-3というデジタルカメラを購入してみた。デジカメの入門機の様な機種で、余計な機能を削ってコストダウンしたモデルだ。
定価で49,800円だったものの当時としてはかなり安価だった。まだまだデジカメは珍しく所有していた方は少なかったであろう。まだまだフィルムカメラが主流だった時代だ。
充電バッテリーは搭載しておらず乾電池で駆動した。SDカードのような外部保存用のスロットも一切用意されておらず、内蔵メモリーのみである。そのメモリーもわずか4MBだった。今だと写真1枚で終わってしまうかも知れない。
サイズ的にも結構大きくて、今のスマートフォンの方が遙かに軽く小さい。
ファインダーはついておらず、パカッと開いた液晶を覗いて写真を撮るもので、オートフォーカスは無い。接写時はくりくりと自分でフォーカスを調整する必要があった。フラッシュが付いていたので暗いところでもそれなりに撮影ができた。ファインダーが無いのは逆に未来的な感じで良かったかも知れない。
写真の解像度は640×480のみで、ファイン,ノーマル,エコノミーと3種類の画質が選べた。タッチ操作などは一切無く、アナログなスライドスイッチで画質を選んだし、細かい操作もボタンオンリーである。
エコノミーだと100枚保存ができたが、ファインだとたった25枚までである。正直ノーマルでもいまいちな画質でファインを選択することが多かった。ファインでもこの時代の写真をプリントすると少々ノイジーな感じだ。
今のようにパシャパシャ取るような事はできず、ここぞと言うときにのみ撮ったし失敗したら即座に削除したものだ。電池持ちにも気をつける必要があった。
当時はまだカーナビが無い車も多く、旅先で看板地図をエコノミーで撮っておく様な使い方をしたのだが、当時はとても新しい手法だった。
デジタルカメラとフィルムカメラの違いを理解するには、十分な機能と性能ではあった。
写真を楽しむ場合はPCで閲覧することが多かったが、付属のケーブルからテレビのビデオ端子に繋げることもできた。今は見ることも無くなった黄色端子のケーブルである。
4MBのメモリーを使い切ったらどうなるかだが、実質諦めるしか無かった。保存するにはPCが必須でノート型PCを持ち歩く位なら、これを2つ買う方が遙かに使い勝手が良かったであろう。データの取り出しはUSBなんてものは無く、RS-232Cという端子経由で通信する必要があった。専用のソフト経由で取り出しが必要で、全部ダウンロードするには最低5分程度はかかった。
このRS-232Cの端子は多くのデスクトップPCには2つ用意されていたが、ほぼPCの背面に用意されていることが多かった。端子が足りなくなることも多く、つなぎ替えが面倒なため切替機を別途用意することも多かった。安物の切替機を買ってしまうと今度はノイズが入ってしまい、通信速度が落ちてしまうと言うデメリットもあり、なかなか面倒だったものである。
このデジタルカメラは、コストパフォーマンスが良くそこそこ普及したように思う。そのため他社からオプションのレンズアダプターも販売された。自分も広角と望遠のセット品を買い活用したものだった。ただ撮り溜めのような事はできないため、自宅に帰ったら写真をすぐにPCに転送する必要があったのが今との違いであろう。
ただ、このデジカメを購入後すぐに驚異的な小型化と高画質化が進んだ。3年後の2000年11月にはJ-PHONE(現ソフトバンク)から初の内蔵型カメラ付き携帯電話が発売された程だ。あっという間に持ち歩くにも少々恥ずかしいくらい陳腐化してしまったのだった。そのため実質使っていたのは、2年も無いかも知れない。
その後、21世紀に入ってからは写ルンです派に逆戻りし、デジタルカメラを購入したことは今日まで一切無い。。。
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